航空コラム

飛行機の車輪はどこに格納される?名前・数・出ないときの備えを現役整備士が解説

飛行機のタイヤの横に立ち、懐中電灯で車輪の格納室を点検する整備士サクラ
サクラ

離陸した飛行機を見上げると、車輪がおなかの中へ吸い込まれていきます。「飛行機の車輪はどこにしまわれるの?」「出なくなったらどうするの?」と気になった方も多いはずです。
結論から言うと、飛行機の車輪は、胴体の下にある「格納室」にしまわれます。万が一出なくなっても、脚の重さで下ろす非常用の仕組みがあります。
現役の一等航空整備士の私が、車輪の名前・数・格納の仕組みを、格納室の中の様子と一緒にお話しします。

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私と同じ一等航空整備士が書いた本もあります。『現役航空整備士が書いたかなりマニアックな飛行機豆知識』です。機体構造の章があります。機体の作りをもっと知りたくなった方はどうぞ📕

結論:飛行機の車輪は「ランディングギア」と呼び、格納室にしまわれます

飛行機の車輪は、脚の柱やブレーキまで含めて「ランディングギア」と呼びます。日本語では「降着装置」や「脚(きゃく)」です。

離陸するとランディングギアは折りたたまれ、胴体の下にある格納室(ホイールウェル)に入ります。脚を出したままだと空気の抵抗が大きく、燃料を多く使うためです。

飛行機の車輪の名前と数

ランディングギアは2種類あります。機首の下にある「前脚(ノーズギア)」と、胴体の中央あたりに左右1本ずつある「主脚(メインギア)」です。機体の重さの大半は主脚が支えます。

飛行機の車輪(ランディングギア)の名前と格納室の図解。前脚と主脚、ホイールウェルの位置

タイヤの数は機種でちがいます。代表的な3機種を表にまとめました。

機種前脚主脚合計
B7372本4本(2本×左右)6本
B7872本8本(4本×左右)10本
B7772本12本(6本×左右)14本

機体が重くなるほど、タイヤの数は増えます。タイヤ1本にかかる重さを分散するためです。タイヤの交換については、飛行機のタイヤは何回で交換する?答えは回数じゃないで紹介しています。

飛行機の車輪はどうやって格納される?

ランディングギアは油圧(作動油の圧力)で動きます。離陸後にパイロットがレバーを上げると、油圧の力で脚が折りたたまれ、格納室におさまります。

格納した脚は、飛行中に落ちてこないようロックされます。脚を出したときも同じで、着陸の衝撃でたたまれないようロックがかかります。地上では、さらにロックピンを差して固定します。ロックピンの役目は、ノーズギアが格納して大破⁉︎整備士が解説するロックピンの重要性で解説しています。

整備士は地上で車輪の出し入れを試験する

ランディングギアを交換したときや、脚まわりの整備をしたあとは、作動試験をします。機体をジャッキで持ち上げ、地上で実際に脚を出し入れする試験です。

サクラ
サクラ

作動試験はめったにない作業ですが、私も経験があります。

飛行中は、油圧ポンプを2個使って脚を出し入れします。作動試験では、動きをじっくり見たいときにポンプを1個だけにします。ポンプが1個だと、脚はゆっくり動きます。

車輪の格納室の中はどうなっている?

格納室には、整備でよく入ります。格納室の中にあるのは車輪だけではありません。配管やポンプなど、さまざまな装備が並んでいます。

広さは機種でちがいます。大きな機種の格納室は広く、小さな機種の格納室は狭いです。中に入ると、作動油の独特なにおいがします。

格納室は客室とつながっていません

格納室は「非与圧エリア」です。客室のように空気の圧力を保つ仕組みがありません。上空では空気が薄くなり、気温も大きく下がります。人が耐えられる環境ではありません。

アメリカ連邦航空局(FAA)の報告書も、格納室を与圧されていない区画と説明しています。中にいる人は、極度の酸素不足と寒さにさらされます(Survival at High Altitudes: Wheel-Well Passengers)。

名探偵コナンとルパン三世が共演するアニメには、コナンが離陸する飛行機の脚に飛びつく場面があります。格納室の配線を切って操縦室に異常を知らせ、機内に入れてもらう流れです。一般的な旅客機では、同じことはできません。格納室は非与圧エリアで、客室とつながっていないためです。ビジネスジェットについては、私は詳しくないので分かりません。

飛行機の車輪に動力はある?ブレーキは?

飛行機の車輪に、自分で回る動力はありません。地上を進む力は、エンジンの推力です。自力でバックはできないので、出発のときはトーイングカーが機体を押します(トーイングカーの記事)。

ブレーキは主脚の車輪に付いています。旅客機の前脚にはふつうブレーキがなく、前脚は向きを変える役目です。地上で曲がる仕組みは、飛行機は地上でどうやって曲がる?で紹介しています。

飛行機の車輪が出ないときはどうする?

通常の操作で脚が出ないときのために、ランディングギアには非常用の装置が付いています。ロックを外して、脚の重さで下ろす装置です。油圧が使えなくても脚を出せます。

非常用の装置も、定期的に作動点検をしています。

アメリカの旅客機の設計基準も、通常の仕組みが故障したときに脚を出す非常手段を求めています(14 CFR 25.729)。同じ基準で、操縦室には脚の位置を示す表示が付きます。脚がロックされないまま着陸しようとすると、警報が鳴ります。

整備士が出発前に車輪まわりで見ているところ

出発前の点検では、車輪まわりで次のようなところを見ています。

  • 脚の伸び縮みする部分から作動油がもれていないか
  • ロックピンを抜き忘れていないか
  • タイヤに傷やすり減りがないか

脚に鳥がぶつかった跡を見つけたこともあります。バードストライクが起きるのは、機首やエンジンだけではありません(バードストライクの記事)。

よくある質問

Q. 飛行機の車輪は何個あるの?
A. 機種でちがいます。タイヤの数は、B737が6本、B787が10本、B777が14本です。

Q. ランディングギアとタイヤはちがうの?
A. タイヤはランディングギアの一部です。脚の柱、ブレーキ、車輪、タイヤをまとめてランディングギアと呼びます。

Q. 車輪の格納室から客室へ行けるの?
A. 一般的な旅客機では行けません。格納室は非与圧エリアで、客室とつながっていません。

まとめ:車輪は「しまう・出す・止める」を支える装置

  • 飛行機の車輪は「ランディングギア」と呼び、前脚と主脚がある
  • タイヤの数は機種でちがい、B737は6本、B787は10本、B777は14本
  • 離陸後は油圧で折りたたまれ、胴体の下の格納室にしまわれる
  • 格納室は非与圧エリアで、客室とはつながっていない
  • 脚が出ないときは、脚の重さで下ろす非常用の装置がある

車輪の先に付いているタイヤにも、整備士ならではの見どころがあります。交換の目安や点検の中身は、下の記事で紹介しています。

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一等航空整備士
一等航空整備士の資格を持つ、現役の航空整備士です。 日本国内はもちろん、海外でも整備士としての経験を積んできました。 日々、飛行機と向き合う中で感じたことや、現場で学んだリアルな知識を発信しています✈️ 航空ニュースの深掘りや、普段はあまり知られていない整備の裏側、そして空の魅力まで。 飛行機がもっと面白くなる、そんなきっかけを届けられたら嬉しいです。
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