ノーズギアが格納して大破⁉︎整備士が解説するロックピンの重要性
「整備作業中にピンを1本挿し忘れた」——それだけで、飛行機がゲートで機首から地面に崩れ落ちる。そんな信じられない事故が、2026年6月4日にフランクフルト空港で実際に起きました。
現役の航空整備士として、今回はこの事故の原因である「ロックピン(安全ピン)」について、なぜこれほど重要なのかを解説します。
事故の概要:ルフトハンザB787-9がゲートで機首着地
2026年6月4日、ルフトハンザ航空のボーイング787-9(フランクフルト→ロサンゼルス便)が、乗客搭乗前の地上作業中に異常な事態に陥りました。
すべてのギアドアが突然開き、ノーズギア(前脚)が格納位置に引き込まれ、機首が地面に直接着地。乗客への被害はなかったものの、乗務員数名が負傷し、機体には大規模な損傷が発生しました。

原因として指摘されているのが、地上作業時に「ロックピン」を正しく挿入しないまま作業を進めたことです。詳細はAviation Heraldの報告をご参照ください。
ロックピン(安全ピン)とは何か?
この安全ピンとは、ランディングギア(降着装置)が地上にある間、誤作動で格納されないように物理的に固定する金属製のピンです。「セーフティピン」や「ギアピン」とも呼ばれます。
飛行機のランディングギアは油圧で動作します。何らかの理由で油圧が誤って作動すると、地上にいる飛行機のギアが格納されてしまいます。それを防ぐのが安全ピンの役割です。
B787のような大型機では、ノーズギア(前脚)とメインギア(主脚)それぞれにピンを挿入します。このピンが入っていると、油圧がかかっても物理的にギアが動かない構造になっています。
なぜロックピンの挿し忘れが起きるのか
「そんな基本的なこと、なぜ忘れるの?」と思う方も多いでしょう。しかし整備の現場では、ピンの挿し忘れや抜き忘れは決して珍しいミスではありません。
ギアのピンは「作業前に挿す→作業後に抜く」という手順が基本です。しかし、複数の作業者が関わる複雑な作業工程の中で、「誰かが確認してるだろう」という思い込みや、手順の飛ばしが起きることがあります。これを航空業界では「スイスチーズモデル」的なヒューマンエラーと呼びます。
整備士はこうしたミスを防ぐため、ピン類には赤いリボン(ストリーマー)や「REMOVE BEFORE FLIGHT」タグを付けて視覚的に管理します。また、ピンの本数を出発前に必ずカウントし、機体から持ち出したことを確認してから離陸を許可する手順になっています。
それでもなぜ今回の事故が起きたのか
報告では、ギアの試験作業中に安全ピンを挿入しないまま手順が進んだ可能性が指摘されています。B787では複数の地上試験でギアを動作させる工程があり、その中でピン管理が徹底されなかったと見られています。
整備作業は手順書(マニュアル)に従って進めます。しかし、試験の途中でピンを一時的に抜いた後、再挿入のステップが漏れるケースがあります。これは「作業途中の状態管理」の難しさを示しており、どんなに経験豊富な整備士でも発生しうるリスクです。
整備士として思うこと
この事故を聞いて、整備士として真っ先に思ったのは「対岸の火事ではない」ということです。安全ピンの管理は整備の基本中の基本ですが、だからこそ慣れによる油断が生まれやすい。
航空整備の世界では「習慣化されたミス」が最も危険と言われます。毎回同じ手順をこなしているうちに、確認が形骸化してしまうことがあるからです。今回の事故は、改めてチェックリストと相互確認の重要性を業界全体に訴えかけるものだと感じます。
ちょっと詳しく
この機種はBoeing787という機体です✈️この機種の特徴として油圧システムが既存の機種に比べて非常に高いです。(B787:5,000psi 既存機種:3,000psi)安全ピンが適切に挿入されていない場合、このような深刻な事態になる可能性があります。

B787は不具合が多いから回復操作が必要なため!
地上でランディングギアレバーを操作するのは航空整備士だけ!操作する時期として
- オペレーションチェックの時
- 油漏れでの場所特定の為
- 【B787特有】システムのリセットの為
などが代表例です。B787は電気信号で各システムをコントロールしています。ここに不具合があった場合はリセットのためにランディングギアレバーを操作する場合があるのです✈️
まとめ
・ロックピンはギアの誤格納を防ぐ物理的な安全装置
・挿し忘れ・抜き忘れは経験豊富な整備士でも起きうるヒューマンエラー
・「REMOVE BEFORE FLIGHT」タグやピン本数管理で防止
・今回の事故は手順書の徹底と相互確認の重要性を改めて示した
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