航空コラム

飛行機のトイレは垂れ流し?流した先と仕組みを現役整備士が解説

飛行機のトイレは垂れ流しかを解説するアイキャッチ。便器から床下のタンクへつながる配管を指さす整備士サクラ
サクラ

飛行機のトイレで水を流すと、「ズボッ」と大きな音がして一瞬で吸い込まれます。あの先がどこにつながっているのか、気になったことはないでしょうか。

「空にまいているのでは?」と思っている人も少なくありません。私は現役の航空整備士です。この記事では、飛行機のトイレの流れる先と仕組みを、整備の現場から解説します。

※本記事にはアフィリエイト広告(PR)を含みます。

結論:飛行機のトイレは垂れ流しではありません

飛行機のトイレで流したものは、機体の中にある専用のタンクにたまります。空にまくことはありません。

そもそも飛行中にタンクの中身を捨てることは認められておらず、パイロットが捨てる仕組みもありません。タンクの中身は、着陸したあとに地上で抜き取ります。

サクラ
サクラ

「飛行機のトイレって空に捨ててるの?」とよく聞かれます。流したものは専用のタンクに行くので、空には捨てていません。ただ、手を洗った水は空に捨てている機種もあります。

流したものが行く専用のタンク

便器で流したものは、配管を通って床下のタンクへ運ばれます。

タンクの中身を抜く作業は、ふだんは整備以外の部署が担当しています。整備士が担当するのは、定期的に行う本格的な清掃です。

ごくまれに、乗客の方がトイレに指輪などの大切なものを落とすことがあります。そのときは、整備士がタンクの中から探すこともあります。

吸い込む仕組みは地上と上空で違う

飛行機のトイレは、水の勢いではなく、空気の力で吸い込んで運びます。タンクの中の気圧を低くして、便器とのあいだの気圧の差で吸い込む仕組みです。

地上では機械でタンクの気圧を下げる

地上にいるときは、タンクの中の気圧を下げる専用の機械が動いています。この機械が壊れると、地上ではトイレが使えなくなります。

上空では機内と機外の気圧の差を使う

上空では、機内と機外の気圧の差によって、タンクの中の気圧が下がります。そのため、地上で機械が壊れて使えなかったトイレも、上空では使えるようになります。

機内と機外の気圧の違いは、飛行機の窓の小さな穴の記事でも解説しています。

手を洗った水は空に捨てている

実は、トイレの洗面台で手を洗った水は、機体の外に捨てている機種があります。トイレで流したものとは別の配管を通り、機体の下から外へ出ていきます。

出口の部分は、凍りつかないようにヒーターで温められています。機種によっては、手洗いの水もタンクへ送るものもあります。

「垂れ流し」と思われる3つの理由

昔の列車のトイレは線路に流していた

日本の列車のトイレは、かつて線路に直接流す方式でした。JRでは、2002年3月にJR北海道の車両を最後に、この方式の車両の運行が終わっています。

そのため、「乗り物のトイレは垂れ流し」というイメージを持つ人もいます。

手洗いの水は外に出ている

前の章のとおり、手洗いの水は外に捨てている機種があります。この話が、トイレで流したものと混ざって伝わることがあります。

漏れて凍った「ブルーアイス」

ごくまれに、タンクから漏れた汚水が上空で凍りつき、機体から落ちることがあります。消毒液の色から「ブルーアイス」と呼ばれています。

アメリカでは、1979年から2003年までに地上への落下が27件記録されています(SKYbrary「Blue Ice」)。捨てたものではなく、漏れによる事故です。

トイレが壊れたら飛行機はどうなる?

トイレが壊れたまま出発することはあります。

飛行機には、壊れていても安全に飛べる装備と、直さないと飛べない装備が決められています。トイレが前者に当たる場合は、壊れたトイレを使えないようにして出発します。

地上でタンクの気圧を下げる機械が壊れた場合は、地上ではトイレが使えません。上空に上がれば、気圧の差で使えるようになります。

いちばん多い不具合は「詰まり」

整備士が対応するトイレの不具合で、いちばん多いのは詰まりです。機種によって、詰まりやすさにも差があります。

実際に詰まっていたものには、次のようなものがあります。

  • おむつ
  • 下着
  • 子どものおもちゃ

トイレットペーパー以外は流さないでください。詰まったトイレは、整備士が直すまで使えなくなります。

においの対策

飛行機のトイレには、トイレの中の空気を吸い出す専用の換気の仕組みがあります。においがこもりにくいのはそのためです。

あわせて、整備でも定期的にトイレをきれいにしています。

飛行機の中をもっと知りたい人へ『飛行機大図鑑』

飛行機のトイレをふくめて、機内のつくりをひと通り見渡せる本があります。ニュートンプレスの『飛行機大図鑑』(Newton大図鑑シリーズ)です。

監修は、航空科学博物館の学芸員である今野友和さんです。東京大学大学院で航空宇宙工学を専攻され、博士(工学)の学位を持つ方です。

目次の「飛行機大解剖」の章には、次のような項目が並んでいます。

  • キャビン
  • ギャレー・クルーレスト
  • トイレ
  • 貨物室

まとめ

  • 飛行機のトイレは垂れ流しではなく、専用のタンクにたまる
  • タンクの中身は、着陸したあとに地上で抜き取る
  • 地上では機械で、上空では機内と機外の気圧の差で吸い込む
  • 手を洗った水は、機体の外に捨てている機種がある
  • いちばん多い不具合は詰まり。トイレットペーパー以外は流さない

機内の空気や気圧の仕組みは、飛行機のエアコンの記事で解説しています。

あわせて読みたい
飛行機のエアコンってどうなってるの?現役整備士が仕組みをやさしく解説
飛行機のエアコンってどうなってるの?現役整備士が仕組みをやさしく解説
ABOUT ME
サクラ
サクラ
一等航空整備士
一等航空整備士の資格を持つ、現役の航空整備士です。 日本国内はもちろん、海外でも整備士としての経験を積んできました。 日々、飛行機と向き合う中で感じたことや、現場で学んだリアルな知識を発信しています✈️ 航空ニュースの深掘りや、普段はあまり知られていない整備の裏側、そして空の魅力まで。 飛行機がもっと面白くなる、そんなきっかけを届けられたら嬉しいです。
記事URLをコピーしました