飛行機のフラップとは?離陸と着陸で翼が変わる理由を現役整備士が解説
飛行機の窓から翼を見ていると、離陸や着陸の前に翼の後ろの板がウィーンと伸びてきます。あの板が「フラップ」です。
私は現役の航空整備士です。この記事では、飛行機のフラップの役割と、離陸と着陸で出し方が違う理由を解説します。翼の前で動く「スラット」との順番や、整備士が点検で見ているところも紹介します。
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飛行機のフラップとは?翼の後ろが伸びる板
飛行機のフラップは、主翼の後ろ側についている板です。離陸や着陸のときに、後ろへ伸びながら下へ折れ曲がります。
フラップの役割は、ゆっくり飛んでいても揚力(機体を持ち上げる力)を十分に出すことです。翼の面積が広がり、翼の反りも大きくなります。そのため、低い速度でも機体が浮いていられます。

空の上を速く飛んでいるときは、フラップを翼の中にしまっています。速度が出ていれば、フラップがなくても十分な揚力が出るからです。フラップを出したままだと空気の抵抗が増えて、燃料も余計に使います。
揚力が速度と翼の形で決まる仕組みは、飛行機はなぜ飛ぶの?難しい式を使わずに現役整備士がやさしく解説で紹介しています。
離陸と着陸でフラップの出し方が違う理由
フラップは、離陸では少しだけ出し、着陸では大きく出します。離陸と着陸では、翼に求めるものが違うからです。
- 離陸:加速して上昇したい。揚力は増やしたいが、空気の抵抗は増やしすぎたくない
- 着陸:ゆっくり降りたい。揚力をできるだけ大きくしたい。空気の抵抗は増えても構わない

JAXA(宇宙航空研究開発機構)の研究者のコラムでも、着陸では離陸より大きくフラップを降ろすと説明されています(JAXA航空技術部門「飛行機の窓からの景色」)。
空港の近くで聞こえる、着陸前の飛行機の「ゴー」という音にも、フラップが関わっています。JAXAの別のコラムによると、着陸に向けて降りてくる旅客機の騒音は、フラップやスラット、車輪のまわりで乱れた空気の音が主な原因です。
窓側の席に座ったら、離陸前と着陸前でフラップの角度を見比べてみてください。着陸前のほうが、板が大きく下に折れています。
翼の前にも動く板がある「スラット」
フラップが動くときは、翼の前側にある「スラット」という板も動きます。スラットは、翼の前のふちが前へせり出して下へ傾く装置です。
スラットを出すと、機首を上げた姿勢でも翼の上の空気の流れがはがれにくくなります。空気の流れがはがれると、揚力が急に失われる「失速」が起きます。スラットは、失速を防ぐための装置です。
出すときはスラットが先、しまうときはフラップが先
スラットとフラップは、同時に動くわけではありません。動く順番が決まっています。
- 出すとき:スラットが先に出て、そのあとフラップが出る
- しまうとき:フラップが先にしまわれて、そのあとスラットがしまわれる

出すときも、しまうときも、フラップが出ている間はスラットも出ている順番です。

窓から見ていると、フラップにばかり目が行きがちです。でも実は、その少し前に翼の前でスラットが動いています。翼の前のふちが前に出ていたら、それがスラットです。
着陸後に立ち上がる板はスポイラー
着陸したあとに翼の上で立ち上がる板は、フラップではなく「スポイラー」です。フラップとスポイラーは、揚力に対する役割が正反対です。
- フラップ:揚力を増やして、ゆっくり飛べるようにする
- スポイラー:揚力を消して、車輪のブレーキを効きやすくする

着陸の直後は、フラップが出たままスポイラーが立ち上がります。スポイラーと逆噴射で機体が止まる仕組みは、飛行機の逆噴射とスポイラーの記事で解説しています。
整備士はフラップの何を点検している?
ふだんの点検で、私たちがフラップで見ているのは、鳥や石などが当たった傷がないかです。
フラップは、離陸や着陸で地面に近いところを飛ぶときに大きく出ています。飛んでいる鳥や、滑走路で跳ねた小石が当たることもあります。小さなへこみでも見逃さないように、フラップの表面を確認します。
海外でフラップが壊れていたとき
以前、海外の空港で、フラップが壊れていたことがありました。鳥か石か、何かが当たったようです。送られてきた画像を見ましたが、大変そうな壊れ方でした。
そのときは、海外の空港ではフラップを交換できませんでした。そこで飛行機のメーカーに問い合わせて、簡易的な処置をしています。本格的な修理は、日本に戻ってから行いました。
壊れ方によっては、整備士だけでは直し方を決められないことがあります。そんなときはメーカーに問い合わせて、どう直すかを相談します。
フラップをもっと詳しく知りたい人へ
フラップやスラットの仕組みを本で確かめたいなら、次の1冊があります。
『ジェット旅客機の秘密に迫る 「安全」「高速」「快適」を支える機体と運航のメカニズム』(原野康義 著・SBクリエイティブ)
目次には「フラップとスラット」「スポイラー」の項目があります。この記事で取り上げた装置が載っている本です。脚(ランディングギア)や、与圧と空調の章もあります。
著者は、大手航空会社で整備と運航技術に長く携わった方です。2024年3月に発売された256ページの本です。
まとめ
- 飛行機のフラップは翼の後ろの板で、ゆっくり飛ぶために揚力を増やす
- 離陸では少し、着陸では大きく出す
- 翼の前のスラットと順番に動く(出すときはスラットが先、しまうときはフラップが先)
- 着陸後に立ち上がる板はスポイラーで、役割はフラップの反対
- 整備士は、鳥や石が当たった傷がないかを点検している
窓側の席で翼を見るときのポイントは、整備士が飛行機に乗るとつい見てしまうポイント7選にもまとめています。

