航空コラム

飛行機のジェットエンジンの仕組みとは?4つの流れとエンジンスタートを現役整備士が解説

渦巻きマークのあるジェットエンジンの前で、ヘッドセットを付けてOKの合図をする整備士サクラ
サクラ

飛行機の翼の下に付いている大きなエンジン。「中で何が起きているの?」と気になったことはありませんか。
結論から言うと、ジェットエンジンの仕組みは「空気を吸う・圧縮する・燃やす・後ろへ噴き出す」の4つの流れです。
現役の一等航空整備士の私が、ジェットエンジンの仕組みと、エンジンをスタートさせる流れをお話しします。出発のときに機内のエアコンの音が止まる理由も分かります。

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ジェットエンジンをもっとくわしく知りたい方には、私と同じ一等航空整備士が書いた本があります。『現役航空整備士が書いたかなりマニアックな飛行機豆知識』(日本航空技術協会)です。第15章から第19章までの5つの章が、エンジンの解説にあてられています📕

結論:ジェットエンジンの仕組みは「吸う・圧縮する・燃やす・噴き出す」

ジェットエンジンは、空気を吸い込んで圧縮し、燃料を燃やして、燃えたガスを後ろへ噴き出します。車のエンジンは4つの作業を1つの部屋でおこないます。飛行機のエンジンは、作業ごとに別の部屋でおこないます(JAXA 世界をリードする次世代ジェットエンジン技術)。

空気が通る順番は、次のとおりです。

  1. ファン:空気を吸い込む
  2. 圧縮機:空気を圧縮する
  3. 燃焼器:空気と燃料を混ぜて燃やす
  4. タービン:燃えたガスの力で回る
  5. 排気口:ガスを後ろへ噴き出す
ジェットエンジンの仕組みの図解。ファン、圧縮機、燃焼器、タービン、排気口の順に空気が流れる

旅客機のジェットエンジンは、前の大きなファンが主役

旅客機のエンジンは、いちばん前に大きなファンが付いています。ファンが吸い込んだ空気の多くは、燃焼器を通りません。エンジンの外側を流れて、そのまま後ろへ出ます。

JAXAによると、B787のエンジンは、ファンだけを流れる空気の量が、燃焼器に送られる空気の約11倍です。ファンだけを流れる空気が多いほど、燃費が良くなり、音も小さくなります。

ファンは1分間に約3,000回転

エンジンによってちがいますが、前のファンは最大で1分間に約3,000回転します。奥にある別の羽根は、1分間に約10,000回転します。

ジェットエンジンはどうやってスタートする?

エンジンをスタートさせる流れは、次のとおりです。

  1. パイロットが複数のスイッチを操作する
  2. 高圧の空気でスターターが回り、エンジンが回りはじめる
  3. ある程度の回転数になると、燃料と点火装置(イグニッション)が作動して火が付く
  4. エンジンが自分の力で回り続けられる回転数まで上がる

スターターを回す高圧の空気は、APUという装置が作ります。APUについては、飛行機のAPUの記事で紹介しています。

スタート中に機内のエアコンの音が止まる理由

高圧の空気をエンジンのスタートに使うため、スタートのあいだはエアコンが止まります。機内では、エアコンの音が止まります。

B787だけは、空気ではなく電気でスターターを回します。スタートのときは電力が足りなくなります。そこで、エアコンのモーターに送る電力を止めて、エンジンのスターターへ電力を送ります。

サクラ
サクラ

出発のときに機内でエアコンの音が止まったら、エンジンをスタートさせている合図です。

エンジンをスタートさせるタイミング

エンジンは、プッシュバックの最中か、プッシュバックが終わったあとにスタートさせます。タイミングを決めるのは機長です。空港の状況や機体の向きなどを考えて判断しています。

プッシュバックについては、トーイングカーの記事で紹介しています。

なぜ右のエンジンからスタートするの?

エンジンは、だいたい右からスタートさせます。理由は、右のエンジンに付いている油圧ポンプが、ブレーキの油圧を受け持っているためです。何かあったときに、すぐブレーキをかけられるようにしています。

ブレーキには、ほかの油圧系統から油圧を送るバックアップもあります。左から回すとブレーキが効かない、という意味ではありません。

最近の飛行機には、左右のエンジンを同時にスタートさせる機種もあります。高圧の空気や電力を多く作れるようになったためだと、私は考えています。

海外の航空会社のエアバス機は、左からスタートさせているのを見かけます。スタートの順番は、機種によってちがいます。

エンジンのスタートで、整備士は地上から何を見ている?

エンジンをスタートさせるとき、整備士は地上で次の3つを確認しています。

  • ファンブレード(ファンの羽根)がきちんと回っているか
  • エンジンの下から液体がもれていないか
  • エンジンに火が付いたか

火が付かなかったときはどうなる?

エンジンに火が付かないと、後ろから燃料が霧のように出てくることがあります。回転も上がりません。点火装置は2つ付いているので、もう一度スタートを試みます。

回っているジェットエンジンのまわりは立ち入り禁止です

回っているエンジンの前は、数メートルが立ち入り禁止です。空気と一緒に吸い込まれるおそれがあり、とても危険です。

エンジンの後ろは、だいたい機体1機ぶんの長さが立ち入り禁止です。噴き出すガスで吹き飛ばされるおそれがあります。

エンジンの真ん中にある渦巻きマークの意味

エンジンの真ん中には、渦巻きのマークが描かれています。昔は、バードストライクを防ぐためと言われていました。最近は、地上の作業員に「エンジンが回っていて危険」と知らせる目的がある、と言われています。

鳥がエンジンに入るとどうなるかは、バードストライクの記事で紹介しています。

整備士はジェットエンジンのどこを点検している?

エンジンのオイルの補充は、毎日おこないます。ファンブレードの点検も欠かせません。内視鏡を使って、エンジンの中の部品も定期的に点検します。エンジンの交換は、ドック整備で頻繁に実施しています。

エンジンを回せるのは資格を持った整備士だけ

オイルフィルターや燃料フィルター、エンジンの装備品を交換したあとは、整備士がエンジンを回して確認します。エンジンを回せるのは、資格を取った整備士だけです。

サクラ
サクラ

自分でエンジンを回すときは、「資格を取ってよかった」と思える瞬間です。

着陸のときにエンジンで減速する仕組みは、逆噴射とスポイラーの記事にまとめています。

よくある質問

Q. 飛行機のエンジンは、なぜ右からスタートさせるの?
A. 右のエンジンの油圧ポンプが、ブレーキの油圧を受け持っているためです。順番は機種によってちがい、左右同時にスタートさせる機種もあります。

Q. エンジンはいつスタートさせるの?
A. プッシュバックの最中か、終わったあとです。タイミングは機長が決めます。

Q. エンジンの真ん中の渦巻きは何のため?
A. 最近は、地上の作業員にエンジンが回っていることを知らせるため、と言われています。

まとめ:ジェットエンジンの仕組みは4つの流れ

  • ジェットエンジンの仕組みは、吸う・圧縮する・燃やす・噴き出すの4つの流れ
  • 旅客機のエンジンは、前の大きなファンが主役
  • スタートは、高圧の空気でスターターを回してから火を付ける。B787は電気で回す
  • だいたい右のエンジンからスタートさせる。ブレーキの油圧を先に確保するため
  • スタート中は、整備士が地上からファンの回転・液体のもれ・着火を確認している
  • 回っているエンジンの前後は立ち入り禁止

エンジンをスタートさせる空気を作るAPUについては、下の記事で紹介しています。

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一等航空整備士
一等航空整備士の資格を持つ、現役の航空整備士です。 日本国内はもちろん、海外でも整備士としての経験を積んできました。 日々、飛行機と向き合う中で感じたことや、現場で学んだリアルな知識を発信しています✈️ 航空ニュースの深掘りや、普段はあまり知られていない整備の裏側、そして空の魅力まで。 飛行機がもっと面白くなる、そんなきっかけを届けられたら嬉しいです。
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