飛行機のタイヤは何回で交換する?答えは回数じゃない|現役整備士が解説
飛行機のタイヤは、何回着陸したら交換するのでしょうか。
じつは、答えは「回数」ではありません。現場ではタイヤの溝がどれだけ残っているかで交換を決めています。
現役の一等航空整備士である私・サクラが、飛行機のタイヤの交換の基準、交換にかかる時間、中に入っている窒素、着陸のときに出る白い煙の正体まで解説します。タイヤ交換は、私たちライン整備士の日常の仕事です。
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飛行機のタイヤは「回数」ではなく「溝」で交換する
飛行機のタイヤは、決まった着陸回数で交換するわけではありません。溝がすり減ったら交換します。
基準はタイヤのメーカーや機種によって違います。たとえば「溝の深さが1mmを切ったら交換」といった形で決められています。
1機ごとに「何か月で交換」と数えているわけではありません。現場では、どこかの機体のタイヤ交換を毎日のように行っています。
目安として、タイヤメーカーのブリヂストンは、約200〜350回の離着陸で表面のゴムがすり減ると公表しています(ブリヂストン「航空機用タイヤ 技術」)。
ブリヂストン自身も、タイヤは飛行機の部品の中で最も交換頻度が高い部品のひとつだと説明しています。
私と同じ一等航空整備士が書いた本もあります。
『現役航空整備士が書いたかなりマニアックな飛行機豆知識』です。
降着装置(車輪まわり)の章があります。タイヤの話をもっと知りたくなった方はどうぞ📕
1本のタイヤは最大約1,400回使える
すり減ったタイヤは、すぐに捨てるわけではありません。表面のゴムだけを張り替えて、もう一度使います。この張り替えをリトレッドと呼びます。
- バイアスタイヤ:約200回で張り替え、約6回くり返せる
- ラジアルタイヤ:約350回で張り替え、約3回くり返せる
新品のときと合わせると、1本で最大約1,400回の離着陸に使える計算です。
タイヤ交換は2人で約1時間
タイヤ交換は、2人で1時間くらいかかります。
1本がとても大きく重いため、車のタイヤ交換のように1人でさっと終わる作業ではありません。
作業で私がいちばん気をつけているのは、ボルトの締め忘れがないかです。

タイヤは替えて終わりではありません。作業の最後に、ボルトの締め忘れがないかを必ず確かめます。
タイヤ交換で出発が遅れることもある
タイヤ交換が原因で、便が遅れることもあります。
私が経験したのは、到着してから次の出発までの時間が短い便で、タイヤにネジが刺さっていたときです。見つけた以上、そのまま飛ばすことはできません。交換が必要になり、出発が遅れました。
タイヤ交換には約1時間かかります。折り返しの準備時間がそれより短ければ、遅れは避けられません。
整備の都合で出発に間に合わないとき、航空会社は別の機体に乗り換えてもらうこともあります。その裏側は空港の搭乗ゲートはなぜ変わる?に書きました。
タイヤに入っているのは空気ではなく窒素
飛行機のタイヤには、空気ではなく窒素が入っています。
理由は、酸素を入れないためです。着陸ではブレーキとタイヤがかなりの高温になります。過熱したタイヤから出るガスと酸素が反応して、火が出たり破裂したりした事例がありました。
そのため米国の航空当局(FAA)の規則では、大型機のブレーキ付きの車輪について、乾燥した窒素などを入れ、酸素を5%以下にするよう定めています。窒素は燃えにくい不活性なガスなので、高温になっても火が出にくいわけです。
着陸のときの白い煙は、削れたタイヤのゴム
着陸の瞬間、タイヤから白い煙が上がるのを見たことがあるかもしれません。正体は削れたタイヤのゴムです。
空を飛んでいるあいだ、タイヤは回っていません。止まっているタイヤが、接地した瞬間に着陸の速度まで一気に回されます。そのときタイヤが路面にこすられ、削れたゴムが摩擦の熱で煙になります。
整備士の目で見ても、その跡ははっきり残ります。タイヤや脚まわりは、削れたゴムの黒いカスのような汚れがすごいです。
飛行機のタイヤの大きさと空気圧
大型の旅客機のタイヤは、トラックやバスのタイヤとほぼ同じ大きさです。違うのは、支える重さと空気圧です。
- 直径:約1.2〜1.4m(トラック・バスと同じくらい。幅は少し広い)
- 空気圧:トラック・バスの約2倍
- 1本で支える重さ:約20〜26トン(トラック・バスの約10倍)
ジャンボ機の場合、燃料を満タンにした約400トンの機体を、18本のタイヤで支えます(出典:旭産業「KUKI-PEDIA」)。
タイヤ1本の重さは、機種によってまったく違います。
飛行機のタイヤについてよくある質問
飛行機のタイヤは何回くらい使えますか
約200〜350回の離着陸で表面を張り替え、それを数回くり返します。新品から数えて、1本で最大約1,400回使えます。
タイヤ交換にはどれくらい時間がかかりますか
2人で約1時間です。折り返しの時間が短い便では、交換で出発が遅れることもあります。
なぜ空気ではなく窒素を入れるのですか
酸素を入れないためです。着陸で高温になったタイヤが、酸素と反応して火が出るのを防ぎます。
着陸のときの煙は何ですか
削れたタイヤのゴムです。止まっていたタイヤが接地の瞬間に一気に回され、路面にこすられて出ます。
まとめ:タイヤは飛行機でいちばん交換される部品
飛行機のタイヤは、溝を見て交換し、表面を張り替えながら最大約1,400回使われます。中には燃えにくい窒素が入り、着陸のたびにゴムを削りながら機体を支えています。
タイヤと同じく、地上で飛行機の足もとを支えているのが、飛行機を押すトーイングカーです。

