航空整備士の仕事内容とは?4種類を現役が徹底解説
航空整備士の仕事内容は、大きく4種類に分かれます。
同じ「整備士」でも、働く場所も、1回の作業の規模もまったく違います。空港の駐機場で分刻みに動く現場もあれば、格納庫で1機の飛行機に50人がかりで取りかかる現場もあります。
この記事では、現役の航空整備士である私・サクラが4種類の違いを解説します。私が実際に経験したのはライン整備とドック整備の2つです。エンジン整備と装備品整備は、見学で現場を見た範囲で書きます。知らないことは知らないと書きます。
航空整備士の仕事内容は大きく4種類
4種類は「働く場所」と「1回の作業の規模」で見分けられます。
| 種類 | 働く場所 | 1回の規模 | 私の経験 |
|---|---|---|---|
| 運航整備(ライン整備) | 空港の駐機場 | 出発までの数分が勝負 | 経験あり |
| 重整備(ドック整備) | 格納庫 | 約2年ごと・約50人がかり | 経験あり |
| エンジン整備 | エンジンショップ | 機体から降ろして作業 | 見学 |
| 装備品整備 | 整備工場 | 機器ごとに分解・点検 | 見学 |
どの飛行機を、いつ、どこまで整備するか。整備士が現場で勝手に決めることはできません。航空会社が国に届け出た「整備規程」で手順が決まっています(国土交通省「航空会社の安全確保」)。
① 運航整備(ライン整備)は分刻みで動く
運航整備は、毎日の飛行前後におこなう点検です。空港のエプロン(駐機場)で、次のフライトに安全に出発できるかを確認します。
主な作業内容:
- フライト前点検(エンジン・タイヤ・灯火類など)
- 燃料・オイルの補給確認
- 飛行後の不具合確認と対処
- 軽微な部品交換
求められるのはスピードと正確さです。飛行機は定刻に出発しなければなりません。真夏の炎天下でも、真冬の寒空の下でも、決められた時間内に作業を終えます。
不具合は気まぐれ。ドアが閉まってから出てくる
ライン整備でいちばん神経を使うのは、出発直前に出る不具合です。
飛行機の不具合は気まぐれです。乗客が乗り込んでドアが閉まった、その瞬間にコックピットへメッセージが出ることがあります。メッセージの種類は豊富で、内容によって対応はまったく変わります。
このとき私に与えられている時間は、だいたい5分。
手元にあるのは自分の知識と、スマホやタブレットに入っているマニュアルだけです。マニュアルを引きながら「このまま出発できるのか、ドアを開けて直すのか」を決めます。
実際にあった場面では、ドアを開けて対処してから出発しました。
雷が近づくと、地上の作業は止まる
もう1つ神経を使うのが雷です。
雷が近いとき、駐機場での作業は中止になります。屋外で金属の機体に触れる仕事なので、決まりとして止めます。
私の記憶に残っているのは、雷がかなり落ちている中でのプッシュバックです。プッシュバックは、飛行機を駐機場から後ろに押し出す作業を指します。私はヘッドセットでパイロットと交信しながら、その作業に立ち会っていました。
作業を中止するかどうか、ぎりぎりの状況でした。すでにプッシュバックが始まっていたので、そのまま続けるしかありませんでした。
雷が機体そのものにどんな影響を与えるかは、飛行機に雷が当たったらどうなる?の記事にまとめています。
② 重整備(ドック整備)は機種にもよるが約2年ごと
重整備は、格納庫(ハンガー)の中でおこなう大規模な点検です。飛行機を一定期間、運航から外して機体全体をくまなく調べます。
間隔は機種によって違いますが、目安は2年ごとです。自社の格納庫でやるとはかぎりません。国内の別会社に出すこともあれば、海外に委託することもあります。
1機に約50人。私が担当したのは「見えるようにする」作業
重整備には、1機あたり約50人の整備士が関わります。
私が担当したのは、次のような作業です。
- 客室内の椅子を外す
- 貨物室のロックを外し、機体の構造を見やすくする
- 各種部位に潤滑剤を入れる
椅子や内装を外すのは、その下や奥にある機体構造の不具合を見つけるためです。飛行機を「解体する→点検する→組み立てる」に近い作業になります。普段は乗客の足元に隠れている部分まで、すべて目視できる状態にしてから点検に入ります。
格納庫の中がどうなっているかは、飛行機の格納庫の中はどうなってる?で写真つきにまとめました。
③ エンジン整備(私は見学で見た範囲です)
エンジン整備は、航空機のエンジンを専門に分解・点検・組み立てする仕事です。エンジンは飛行機の心臓部にあたるため、高い専門知識が求められます。
主な作業内容:
- エンジンの分解・清掃・点検
- 部品の摩耗・損傷チェック
- 修理・部品交換後の組み立て
- 試験運転による性能確認
多くの場合、エンジンを機体から取り外し、エンジンショップと呼ばれる専用施設に運んで作業します。私は見学で入ったことがありますが、駐機場とは空気がまるで違いました。屋外で風と騒音にさらされるライン整備と、屋内でひたすら部品と向き合うエンジン整備。同じ整備士でも働き方は別物です。
④ 装備品整備(私は見学で見た範囲です)
装備品整備は、機体に載っているさまざまな機器を点検・修理する仕事です。コックピットの計器類、油圧システム、空調装置、電気系統。飛行機には無数の装備品が積まれています。
主な作業内容:
- 計器類の点検・校正
- 電気・電子機器の修理
- 油圧・空調システムの整備
- 顕微鏡を使った精密部品の検査
屋内作業が中心で、細かい手作業が続きます。電子回路が好きな人や、こまかい作業を苦にしない人が向いている分野です。
4種類で給料は変わるのか
「どの分野に行くと稼げますか」とよく聞かれます。
分野そのもので基本給が大きく変わる、という話は私の周りでは聞きません。差が出るとすれば残業です。部署によって残業の量は違うので、結果として給料に差が出ることはあります。
年収の実際の数字は航空整備士は稼げるの?年収のリアルに書きました。
どの分野が自分に向いているか
4種類のうち、私がいちばん好きなのはライン整備です。
理由は、毎回ちがう飛行機に出会えるからです。ドック整備は決まったことの繰り返しになります。一方でライン整備は、生きた飛行機を触ります。その都度ちがう不具合が出るので、新鮮さと面白さがあります。
ただ、好き嫌いと向き不向きは別の話です。どんな人が整備士に向いているかは、航空整備士に向いている人・向いていない人の特徴10選にまとめています。
まとめ:違いは「働く場所」と「1回の規模」
| 種類 | 場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 運航整備 | 駐機場(屋外) | 分刻み・天候に左右される |
| 重整備 | 格納庫(屋内) | 約2年ごと・約50人がかり |
| エンジン整備 | エンジンショップ | 高度な専門技術 |
| 装備品整備 | 整備工場(屋内) | 精密・こまかい作業 |
4つとも「飛行機を安全に飛ばす」という同じ目標に向かっています。自分が整備した飛行機が空へ飛び立つ瞬間は、何年経っても胸が熱くなります。
これから航空整備士を目指す人は、まず入り口を知るところからです。資格や学校のルートは航空整備士になるには?王道の4つのルートにまとめました。

