JALがアイスランドにダイバート(目的地外着陸)!現役整備士が解説するエンジンオイル不具合3つの原因
2026年6月14日、日本航空(JAL)のA350-1000型機がロンドン行きのフライト中に右エンジンのオイルシステムに不具合が発生し、アイスランドのケプラヴィーク国際空港に緊急着陸(ダイバート)しました。この記事では、現役一等航空整備士の視点から、オイルシステムの不具合が何を意味するのかを解説します。
ダイバートとは?
ダイバート(Divert)とは、航空機が目的地に向かう途中で、何らかの理由により予定していない空港に着陸することを指します。英語で「転進」「迂回」を意味し、航空業界では「目的地変更」を表す専門用語として使われています。
ダイバートの主な理由には以下のようなものがあります:
- 機体の技術的不具合(今回のケース)
- 乗客の急病
- 悪天候による目的地空港の閉鎖
- 燃料不足
今回のJAL43便(羽田→ロンドン・ヒースロー)は、右エンジンのオイルシステムに不具合が発生したことで、アイスランドのケプラヴィーク国際空港へのダイバートを決定しました。安全を最優先にした正しい判断です。
今回の事象:JAL A350-1000がアイスランドへ緊急着陸
2026年6月14日、JAL43便(エアバスA350-1000型機、登録記号JA02WJ)が羽田空港を出発後、ロンドンへ向かう途中で右エンジンのオイルシステムに異常が発生。機長は安全を最優先と判断し、最寄りの適切な空港であるアイスランドのケプラヴィーク国際空港にダイバートしました。
JALはすぐに代替機(JA03WJ)を羽田から派遣。翌15日午後2時5分にケプラヴィークへ到着し、機材を交換した後、同日午後6時28分に出発してロンドン・ヒースローへ午後10時3分に到着しました。なお、この影響でニューヨーク往復便(JL5便・JL6便)が機材不足により欠航となっています。
整備士が推測するエンジンオイル不具合の3つの原因

現役一等航空整備士として、「オイルシステムの不具合」という情報から、考えられる原因を3つの観点で解説します。
①エンジンオイル量の低下=オイルリーク
コックピットの計器でオイル量(Oil Quantity)の低下が確認された場合、最も疑われるのはオイルリーク(油漏れ)です。このオイルはシール(パッキン)やパイプの劣化・損傷によって漏れることがあります。フライト中に少量ずつ漏れていき、計器上でオイル量が減少していくパターンが典型的です。
②エンジンオイル圧力の低下=オイルポンプの不具合
オイルプレッシャー(油圧)の低下が確認された場合、疑われるのはオイルポンプの不具合です。オイルポンプはエンジン内部の各部品にオイルを圧送する役割を担っており、ポンプが正常に機能しないとエンジン各部への潤滑が不十分になります。潤滑不足は短時間でエンジンに深刻なダメージを与えます。
③エンジンオイル温度の上昇=熱交換器の不具合
オイル温度(Oil Temperature)が異常に上昇している場合、疑われるのは熱交換器(オイルクーラー)の不具合です。通常、オイルは熱交換器を通じて冷却されます。熱交換器に詰まりや損傷が生じると冷却効率が低下し、オイル温度が急上昇します。高温のオイルは粘度が下がり、潤滑性能が著しく落ちてしまいます。
エンジンオイルが航空機エンジンに不可欠な理由
航空機エンジンにとって、オイルの役割は大きく3つあります。
- 潤滑:エンジン内部の金属部品同士が直接触れないよう、油膜でコーティングする
- 冷却:摩擦によって生じた熱を吸収し、熱交換器へ運んで冷却する
- 洗浄:金属の摩耗粉などの異物をオイルフィルターへ運ぶ
これら3つの機能が正常に働いてはじめて、エンジンは安全に動き続けることができます。特に「潤滑」は最も重要で、オイルが不足したり適切に循環しなくなると、高速回転する部品を支えるベアリング(軸受け)に直接ダメージが及びます。
ベアリングへのダメージがエンジン全損につながる
ベアリングはエンジンシャフト(軸)を支える非常に重要な部品です。航空機のエンジンは数万RPM(毎分回転数)という超高速で回転しており、ベアリングにはその回転を滑らかに保つためにオイルの油膜が常に必要です。
オイル不足でベアリングが焼き付くと、ベアリング自体が破損し、最悪の場合はエンジン全体が損傷・全損に至ります。これが「オイルシステムに不具合が確認されたら即ダイバート」という判断につながる理由です。早期発見・早期対処が絶対的に重要です。
まとめ
今回のJAL A350-1000のダイバートは、オイルシステムの異常を早期に検知し、安全最優先でアイスランドへ着陸した適切な判断でした。
「なぜわざわざ遠いアイスランドへ?」と感じる方もいるかもしれませんが、大西洋上を飛行中の場合、最寄りの適切な空港がアイスランドというケースは珍しくありません。乗客への影響は大きくなりますが、安全のためには最善の選択です。潤滑油の不具合を放置してフライトを続けることは、エンジン全損・最悪の場合には重大事故につながるリスクがあります。現役整備士としても、今回の判断は正しいと断言できます。
今回の事象について詳しくは、Aviation Wire(航空ニュース専門メディア)の記事もご参照ください。
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