B737 MAXは安全?2度の墜落事故の原因とスカイマーク国内初導入を現役整備士が解説
「B737 MAXに乗るのは怖い」そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。2018年と2019年に相次いで発生した墜落事故で世界中に衝撃を与えたボーイング737 MAX。長い飛行停止期間を経て、現在はスカイマークが国内初導入を予定しており、ANAやJALも導入を計画しています。
この記事では、現役一等航空整備士の視点から、737 MAXの墜落事故の原因、その後の安全対策、そして日本国内での導入状況について詳しく解説します。
ボーイング737 MAXとは?
737 MAXはボーイング社が開発した最新鋭のナローボディ旅客機です。従来の737シリーズをベースに、CFM International製の「CFMリープ」エンジンを搭載し、燃費を従来比で約14〜20%改善した次世代モデルです。2017年に就航を開始し、世界各地の航空会社が大量発注した人気機種でした。コンパクトな機体サイズながら航続距離が長く、国内線・中距離国際線に適した機体として注目を集めています。
2度の墜落事故とその原因
①ライオン・エア610便(2018年10月)
2018年10月29日、インドネシアのライオン・エア610便がジャカルタ離陸直後に墜落。乗客・乗員189名全員が亡くなりました。離陸からわずか13分後の出来事でした。墜落後の調査でフライトレコーダーが回収され、機首が繰り返し強制的に押し下げられていた事実が判明しました。
②エチオピア航空302便(2019年3月)
2019年3月10日、エチオピア航空302便がアディスアベバ離陸後に墜落。乗客・乗員157名全員が死亡しました。最初の事故からわずか5ヶ月後という衝撃的な出来事でした。この事故を受け、世界各国の航空当局が相次いで737 MAXの運航停止命令を発出しました。
2度の事故の共通原因として判明したのが、「MCAS(Maneuvering Characteristics Augmentation System:操縦特性補正システム)」の誤作動です。
MCASとは何か?なぜ暴走したのか?
MCASは、737 MAXのエンジン変更に伴う機体特性の変化を補正するために新たに追加されたシステムです。大型化したエンジンを前方に移設したことで機首上げ傾向が強まったため、自動的に機首を下げる制御を行います。
問題は、AOAセンサー(迎え角センサー)の誤信号によってMCASが誤作動し、パイロットが意図しないのに機首が強制的に押し下げられたことです。さらに当初のMCASは1本のセンサーの情報だけで作動し、パイロットが手動で抵抗しても繰り返し作動するという欠陥がありました。訓練も不十分だったため、パイロットが対処できない状態に陥りました。
約20ヶ月の飛行停止と安全対策
2019年3月に世界各国の航空当局が737 MAXの運航停止命令を発出。日本でも国土交通省が同様の措置を取りました。約20ヶ月にわたる飛行停止期間中、ボーイングは以下の対策を実施しました。
- MCASのソフトウェアを全面改修
- AOAセンサーを2本に増設し、両センサーの値が一致した場合のみ作動するよう変更
- MCASの作動範囲・強度を制限し、パイロットが手動でオーバーライドできるよう改善
- パイロット向けの追加訓練を義務化・飛行マニュアルを整備
2020年12月にFAA(米国連邦航空局)が運航再開を承認。欧州EASA、そして2021年3月には日本の国土交通省も承認し、世界での運航が段階的に再開されました。
スカイマークが国内初導入!ANA・JALも導入予定
日本では、スカイマーク航空が737 MAXの国内初導入を予定しています。スカイマークは737 MAX 8を発注しており、国内線の主力機として活用する計画です。コスト競争力の高い737 MAXは、LCC寄りの路線展開をするスカイマークにとって理想的な機材です。
ANAグループやJALグループも737 MAXの導入を検討・計画しており、今後の日本の空で737 MAXの姿を見かける機会が増えることになりそうです。「あの事故を起こした機体が日本に来る」と心配する声もありますが、安全対策の観点から現状を整理してみましょう。
現役整備士が語る「今の737 MAXは安全か?」
整備士として正直にお伝えすると、現在の737 MAXは安全だと考えています。以下の3つの理由からです。
- 世界最高水準の当局審査を通過:MCAS改修後のソフトウェアはFAA・EASA・国土交通省という厳格な航空当局による審査をクリアしています
- 実績が積み上がっている:運航再開から数年が経過し、世界各地で何万フライトもの安全な運航実績があります
- 監視体制が強化されている:今回の事故でボーイングの品質管理問題が明るみに出たことで、継続的な監視・点検が従来以上に厳しく行われています
「2度も事故を起こした機体」というイメージは理解できます。しかし問題が特定・修正された後の航空機は、弱点が明確になっているぶん、むしろ信頼性が高まるとも言えます。整備士として、適切にメンテナンスされた現在の737 MAXを安全に飛ばすことができると断言できます。
まとめ
B737 MAXの2度の墜落事故は、MCASの設計欠陥と不十分な訓練・情報開示が重なった悲劇でした。しかし徹底的な原因究明と安全対策の実施を経て、現在は世界中で運航が再開されています。
スカイマークの国内初導入を皮切りに、ANA・JALも導入を進める予定の737 MAX。航空安全の歴史は「事故から学び、改善する」繰り返しです。現役整備士として、安全対策が施された現在の737 MAXは信頼できる機体だと考えています。これからスカイマークなど日本の航空会社で737 MAXに乗る機会が来たとき、この記事が少しでも安心の参考になれば幸いです。
スカイマークの737 MAX導入の詳細については、Aviation Wire(航空ニュース専門メディア)の記事もあわせてご覧ください。
航空整備士の仕事について詳しく知りたい方はこちらの記事もどうぞ:航空整備士の仕事内容を現役整備士が解説
