飛行機事故の確率は?「ほぼ落ちない」理由を現役整備士が解説
「飛行機が落ちたらどうしよう」。離陸のあとにふわっとする瞬間、怖いですよね。じつは、現役の整備士の私も、あの瞬間は怖いです。
結論から言うと、飛行機事故の確率はとても低いです。旅客機の事故で亡くなる確率は、搭乗1,370万回に1回です。
現役の一等航空整備士の私が、数字の意味と、飛行機が安全な理由を整備の側からお話しします。
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飛行機が安全な理由の1つは、大事な装置が2重になっていることです。装置ごとの仕組みを知りたい方には、私と同じ一等航空整備士が書いた本があります。『現役航空整備士が書いたかなりマニアックな飛行機豆知識』(日本航空技術協会)です。電源、操縦系統、燃料系統、エンジンなど、装置ごとに章が分かれています📕
結論:飛行機事故の確率はとても低い
アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究があります。2018〜2022年に旅客機の事故で亡くなる確率は、搭乗1,370万回に1回でした(MIT News)。
国際航空運送協会(IATA)によると、2025年に世界で起きた事故は51件です。フライトは3,870万回あったので、約76万回に1回の割合です。このうち、亡くなる人が出た事故は8件でした(IATA 2025 Safety Report)。

宝くじの1等とくらべると
宝くじ公式サイトによると、2026年のハロウィンジャンボ宝くじは、1ユニット1,000万枚に1等が1本です(宝くじ公式サイト)。旅客機の事故で亡くなる確率は、ジャンボ宝くじの1等に当たる確率よりも低い計算です。
50年で約40倍安全になった
MITの研究では、1968〜1977年に旅客機の事故で亡くなる確率は、搭乗35万回に1回でした。2018〜2022年は1,370万回に1回です。亡くなる確率は、10年ごとに約半分に減っています。
車や電車とくらべると
アメリカの全米安全評議会(NSC)は、乗り物ごとに、同じ距離を移動したときに亡くなる割合をくらべています。過去10年のアメリカのデータでは、乗用車で亡くなる割合は次のとおりでした(NSC Injury Facts)。
- バスの70倍以上
- 電車の約20倍
- 定期便の旅客機の約1,200倍

アメリカの数字なので、日本とはちがいます。それでも、飛行機がとても安全な乗り物であることが分かります。
離陸のあとの「ふわっ」は何が起きている?

離陸のあとのふわっとする瞬間は、整備士の私も怖いです。
あの瞬間は、気流の関係で、実際に高度が少し落ちています。気のせいではありません。
揺れが気になる方は、飛行機の揺れない席の記事も参考にしてください。
それでも、飛行機事故はゼロではありません
確率が低くても、事故は起きています。新しい機種のB737 MAXは、2018年と2019年の2回、墜落事故を起こしました。2回の事故のあと、世界中でB737 MAXの運航が止められました。
どんなに確率が低くても、隕石が当たる可能性まで考えれば、ゼロにはなりません。だからこそ、整備士は毎日点検をしています。
飛行機が安全な理由:整備の仕組み
大事な装置は2重になっている
飛行機の重要なシステムには、「レダンダンシー」と呼ぶ考え方があります。バックアップや2重の装備を持たせることです。電源、油圧、操縦システムなどの重要なシステムに装備されています。
左右のエンジンを同じ整備士が作業しない
エンジンの重要なシステムは、左右を別の整備士が作業します。ヒューマンエラー(人のうっかりミス)を防ぐためで、航空局からの文書(サーキュラー)で決められています。
ただし、整備士が1人しかいない空港にダイバートしたときなどは例外です。別に決められた方法で監視しながら、1人で左右のエンジンを作業することが認められています。ダイバートについては、ダイバートとは?の記事で紹介しています。
飛べるかどうかはマニュアルで判断する
小さな不具合があるとき、そのまま飛べるかどうかは、マニュアルに従って判断します。
毎日の点検と、決まった期間ごとの点検
飛行機は、毎日整備士が点検しています。さらに、決まった期間ごとに、操縦システムの点検やエンジンの各種フィルターの交換など、さまざまな項目を点検します。

毎日整備士が点検しているから大丈夫!と思っています。
整備士が工具1本まで管理する理由は、工具管理の記事に書きました。
多い事故は「しりもち」や「車輪のトラブル」
IATAの2025年の報告で、いちばん多かった事故は次の4つでした。
- しりもち(テールストライク)
- 車輪のトラブル
- 滑走路からのはみ出し
- 地上での損傷
IATAの「事故」には、命に関わらないものも含まれます。車輪の仕組みは、飛行機の車輪の記事で紹介しています。
よくある質問
Q. 飛行機事故の確率が低いのは嘘じゃない?
A. 国際航空運送協会(IATA)と、MITの研究の数字です。どちらも世界の事故を集計しています。
Q. LCCは危ないの?
A. 日本の航空会社は、大手もLCCも、航空局の指導のもとで同じ航空法のルールに従って運航と整備をしています。海外の航空会社については、私には分かりません。「安全」と「安心」は別なので、海外のLCCが不安だという気持ちは理解できます。
Q. 飛行機で一番安全な席はどこ?
A. 一般的には、後ろのほうの席が安全と言われています。過去の事故では、後ろの席から助かった人が多かったためです。ただし、事故の状況によって変わるので、どの席なら必ず安全、とは言えません。揺れにくい席は、上で紹介した記事にまとめています。
まとめ:飛行機事故の確率は、数字で見ると驚くほど低い
- 旅客機の事故で亡くなる確率は、搭乗1,370万回に1回(MIT)
- 事故が起きる割合は、約76万回のフライトに1回(IATA・2025年)
- ジャンボ宝くじの1等に当たる確率よりも低い
- 同じ距離なら、乗用車で亡くなる割合は旅客機の約1,200倍(アメリカのデータ)
- 離陸のあとのふわっは、気流で実際に高度が少し落ちている
- 大事な装置は2重。左右のエンジンは別の整備士が作業する
- 確率はゼロではないから、整備士は毎日点検する
雷が当たったときの飛行機の安全については、下の記事で紹介しています。

