航空コラム

ダイバートとは?飛行機が目的地以外に着陸する理由と、そのあとを現役整備士が解説

行き先を変えて飛ぶ旅客機を、工具箱を持って見上げる整備士サクラ
サクラ

「当機は目的地を変更して、別の空港に着陸します」。機内やニュースで「ダイバート」という言葉を聞いて、気になった方もいると思います。
結論から言うと、ダイバートとは、飛行機が目的地とちがう空港に着陸することです。
現役の一等航空整備士の私が、ダイバートが起きる理由と、着陸したあとに機体がどうなるのかを、整備の側からお話しします。

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ダイバートの理由になる機体の不具合は、どの装置で起きるのでしょうか。装置ごとの仕組みを知りたい方には、私と同じ一等航空整備士が書いた本があります。『現役航空整備士が書いたかなりマニアックな飛行機豆知識』(日本航空技術協会)です。エアコン、電源、燃料、エンジンなど、装置ごとに章が分かれています📕

結論:ダイバートとは、目的地とちがう空港に着陸すること

ダイバート(divert)は、英語で「進路を変える」という意味です。飛行機が、予定していた目的地とはちがう空港に着陸することを指します。「目的地外着陸」とも呼びます。

出発した空港へ戻る場合は、ダイバートではなく「引き返し」です。英語ではAir Turn Backといい、ATBと略します。引き返しの例は、コックピットでコーヒーをこぼして引き返した話で紹介しています。

ダイバートと引き返しのちがいの図解。ダイバートは目的地とちがう空港に着陸し、引き返しは出発した空港へ戻る

飛行機がダイバートする理由

ダイバートのおもな理由は3つです。

  • 目的地の天気が悪くて着陸できない
  • 機内で急病人が出た
  • 機体に不具合が出た

天気による欠航の基準は、台風で飛行機が欠航する風速の記事にまとめています。

機体の不具合には、意外なものもあります。ペットを乗せた貨物室の温度や換気に不具合が出たときも、近くの空港へ向かうことがあります(飛行機の貨物室の記事)。

ダイバートを決めるのは誰?

ダイバートするかどうかを判断するのは、パイロットです。機体に不具合が出たときは、地上の整備士が助言することもあります。

機体の不具合でダイバートしたら、整備士は何をする?

機体の不具合でダイバートするという連絡が入ると、整備の部署は準備を始めます。検討する内容は、状況によって変わります。

  • 不具合の原因が分かっているとき:関連する部品を、ダイバート先の空港へ送る
  • 原因が分からないとき:到着後に故障探求(原因を探す作業)をして、不具合のある部品を交換する
  • ふだん飛んでいない空港で、整備士がいないとき:整備士を派遣する

機体の不具合によるダイバートは、そのまま飛び続けられない理由があって着陸しています。再び飛ぶには、不具合を直すことが必須です。

サクラ
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引き返しもダイバートも、整備の現場への影響はどちらも大きいです。

天気や急病人が理由のダイバートでは、燃料を確認します

天気や急病人が理由のダイバートでは、機体に不具合はありません。整備士は、燃料を追加で積むかどうかをパイロットに確認します。必要なときは、給油を手配します。

飛行機の燃料については、飛行機の燃料の記事で紹介しています。

ダイバートした飛行機と乗客は、そのあとどうなる?

ダイバートした先が国内の主要な空港なら、代わりの機体を用意します。お客様は、別の機体で目的地へ向かいます。

代わりの機体がないときは、不具合を直してから同じ機体で飛ぶこともあります。その場合は、出発までに時間がかかります。

代わりの機体をやりくりする仕組みは、機材繰りの記事で紹介しています。

ホテル代や交通費などの扱いは、航空会社やダイバートの理由によってちがいます。利用した航空会社の案内を確認してください。

重いまま着陸したときは、特別な点検をします

ダイバートや引き返しでは、燃料をたくさん積んだ重い状態で着陸することがあります。重いまま着陸したときは、ハードランディング(強い衝撃の着陸)の特別点検が必要になります。

機体を軽くするために、空の上で燃料を捨てる機種もあります。くわしくは、上で紹介した燃料の記事に書きました。

よくある質問

Q. ダイバートと引き返しのちがいは?
A. ダイバートは、目的地とちがう空港に着陸することです。引き返しは、出発した空港へ戻ることです。

Q. ダイバートすると、燃料は足りるの?
A. 代わりに着陸する空港を決めて飛ぶ旅客機は、その空港まで飛べる燃料を積むよう決められています(航空法施行規則 第153条)。

Q. ダイバートしたら、その便は欠航になるの?
A. 国内の主要な空港なら、代わりの機体で目的地へ向かうことが多いです。代わりの機体がないときは、不具合を直してから飛ぶこともあります。

まとめ:ダイバートとは安全のために行き先を変えること

  • ダイバートとは、飛行機が目的地とちがう空港に着陸すること
  • 出発した空港へ戻るのは「引き返し」
  • おもな理由は、天気・急病人・機体の不具合
  • 機体の不具合のときは、部品を送る・原因を探す・整備士を派遣する
  • 国内の主要な空港なら、代わりの機体で目的地へ向かう
  • 重いまま着陸したときは、特別な点検が必要

実際に起きたダイバートの例は、下の記事で解説しています。

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一等航空整備士
一等航空整備士の資格を持つ、現役の航空整備士です。 日本国内はもちろん、海外でも整備士としての経験を積んできました。 日々、飛行機と向き合う中で感じたことや、現場で学んだリアルな知識を発信しています✈️ 航空ニュースの深掘りや、普段はあまり知られていない整備の裏側、そして空の魅力まで。 飛行機がもっと面白くなる、そんなきっかけを届けられたら嬉しいです。
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