航空コラム

飛行機の燃料は何?灯油に近いジェット燃料と満タンにしない理由を現役整備士が解説

飛行機の燃料は何?給油車から給油中のSAKURA AIR機の主翼を指さすサクラ猫のイラスト
サクラ

飛行機は何の燃料で飛んでいるのか、気になったことはありませんか。車と同じガソリンではありません。

私は現役の航空整備士です。この記事では、飛行機の燃料の種類と量、満タンにしない理由を解説します。空の上で燃料を捨てる理由や、整備士と燃料の関係も紹介します。

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燃料のことをもっと詳しく知りたい人には、『ジェット旅客機の秘密に迫る 「安全」「高速」「快適」を支える機体と運航のメカニズム』(原野康義 著・SBクリエイティブ)があります。

目次には、第6章「燃料タンクと燃料の話」があります。燃料タンクの種類と配置、燃料の量の測り方、実際の運航での燃料の消費量などが並んでいます。

飛行機の燃料は「灯油に近いジェット燃料」

旅客機の燃料は、ジェット燃料と呼ばれるものです。成分は、家のストーブで使う灯油に近いものです。

そのため、エンジンをかけるときは、家のストーブのようなにおいがします。

灯油との違いは「品質の厳しさ」

成分が近いといっても、家の灯油をそのまま飛行機に入れるわけではありません。ジェット燃料には、厳しい規格と品質管理が求められています。

石油連盟によると、ジェット燃料に求められる主な特徴は次のとおりです(石油連盟「ジェット燃料油の品質」)。

  • 燃え方がよく、出せる熱が大きい
  • 熱に強く、変質しにくい
  • 凍りにくい
  • 静電気を帯びにくい
  • 水分や異物が混ざっていない

上空はマイナス50℃前後まで冷えるので、凍りにくいことは特に大切です。民間の旅客機では、「Jet A-1」という国際規格の燃料が使われています。

燃料はどこに入っている?何リットル?

旅客機の燃料は、主に主翼の中に入っています。翼の中の空間そのものが燃料タンクです。整備士がタンクの中に入って作業する話は、燃料タンクの記事で紹介しています。

入る量は機種によって違います。ボーイングの公式資料では、787-8の使える燃料は126,206リットルです(Boeing 787 Airport Planning)。灯油のポリタンク(18リットル)に置き換えると、約7,000個分になります。

飛行機の燃料の図解。ボーイング787-8の使える燃料は126,206リットルで灯油のポリタンク約7,000個分。最大離陸重量約228トンと最大着陸重量約172トンの差は約55トン

満タンにしないのはなぜ?

飛行機は、毎回燃料を満タンにするわけではありません。飛ぶ距離や乗客の数、天候などから、必要な量だけを入れます。

理由は、飛行機は軽いほど燃費がよいからです。燃料にも重さがあるので、余分に積むと、その重さを運ぶために燃料をさらに使ってしまいます。

「必要な量」には予備の燃料も入っている

必要な量といっても、目的地までぎりぎりの量ではありません。国の決まりで、予備の燃料を積むことになっています。

代替空港を決めて飛ぶ旅客機の場合、目的地までの燃料に次の燃料を加えます(航空法施行規則 第153条)。

  • 目的地から代替空港まで飛ぶ燃料
  • 代替空港の上空で30分待機できる燃料
  • 不測の事態に備える燃料

タンクには2%以上の空きがある

燃料タンクには、満タンでもわずかな空きが残るように作られています。設計基準では、タンクの容量の2%以上を膨張のためのスペースにすると決められています(FAA 14 CFR 25.969)。

給油するのは燃料会社、量の確認は機長か整備士

給油の作業をするのは、燃料会社の担当者です。現場では「燃料屋さん」と呼んでいます。

給油が終わったら、決められた量が入っているかを確認します。確認する人は会社によって違い、機長が確認するところもあれば、整備士が確認するところもあります。

空の上で燃料を捨てることもある

出発したあとに不具合が見つかり、引き返すことがあります。このとき機体は、長い距離を飛ぶための燃料を積んだままです。

重いまま着陸すると、着陸装置などに大きな力がかかります。そのあとの整備点検のコストも高くなります。787-8の場合、離陸できる最大の重さと着陸できる最大の重さには、約55トンの差があります。

そこで一部の機種には、空の上で燃料を捨てる「燃料投棄」の装置が付いています。設計基準で、決められた上昇性能を満たせない機種に取り付けることになっています(FAA 14 CFR 25.1001)。

捨てた燃料は地上に降ってこない

燃料投棄は、決められた場所と高度で、市街地を避けて海の上などで行います。高い高度で捨てた燃料は霧状になって広がり、気化するので地上には降ってきません。

燃料を被る整備士もいる

燃料系統の整備をしていると、燃料を被ってしまう整備士がたまにいます。

そのため、目を守るシェードなどの保護具がとても大切です。

サクラ
サクラ

燃料系統の作業では、燃料を被ってしまうことがあります。だからこそ、シェードなどの保護具は面倒でも必ず着けます。

まとめ

  • 飛行機の燃料は、灯油に近いジェット燃料
  • 燃料は主に主翼の中に入っていて、787-8では約12万6千リットル
  • 軽いほど燃費がよいので満タンにせず、予備を含めた必要な量だけ入れる
  • 給油は燃料会社が行い、量の確認は機長か整備士が行う
  • 一部の機種は空の上で燃料を捨てられ、捨てた燃料は地上に降ってこない

翼の中の燃料タンクで整備士がどう作業しているかは、飛行機の燃料タンクに人が入る!?コックさん姿の整備士の正体を現役が解説で詳しく紹介しています。

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一等航空整備士
一等航空整備士の資格を持つ、現役の航空整備士です。 日本国内はもちろん、海外でも整備士としての経験を積んできました。 日々、飛行機と向き合う中で感じたことや、現場で学んだリアルな知識を発信しています✈️ 航空ニュースの深掘りや、普段はあまり知られていない整備の裏側、そして空の魅力まで。 飛行機がもっと面白くなる、そんなきっかけを届けられたら嬉しいです。
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