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コックピットでコーヒーをこぼしてダイバート!実際にあった事例と機器の重要性

コックピットでコーヒーをこぼしてダイバートした事例を表す、コーヒーが操作パネルにかかって驚く機長姿のサクラ
サクラ

「コーヒーをこぼしただけで、飛行機が行き先を変えた」という話を聞いたことはありますか?

実はこれ、実際に起きた話です。大西洋の上で機長がコーヒーをこぼし、飛行機がダイバート(目的地以外の空港への着陸)したケースがあります。

「それって大げさでは?」と思う方もいるかもしれません。でも、操縦席の構造と機器の重要性を知れば、なぜそれほど深刻な事態になるのかが理解できます。

ダイバートとは?ATBとの違い

ダイバートとは、目的地以外の空港に着陸することです。英語の「divert(行き先を変える)」から来ています。

似た言葉にATB(Air Turn Back)があります。ATBは、離陸したあとに出発した空港へ引き返すことです。今回の飛行機は出発地には戻らず途中の空港に降りたので、ATBではなくダイバートに当たります。

どちらも、機体に重大な不具合が出たときに、乗客の安全を最優先にして下す判断です。予定どおりに飛ぶのをやめるのは、それだけ深刻な状態だったということです。

ダイバートの別の例として、JAL機がエンジンオイルの不具合でアイスランドに降りた件も解説しています。

コックピットにこぼした機器はACP(Audio Control Panel)

この件は、イギリスの航空事故調査局(AAIB)が報告書を公開しています。2019年2月6日、ドイツのフランクフルトからメキシコのカンクンへ向かっていたエアバスA330で起きました。

大西洋の上で、機長が置いていたコーヒーのカップが倒れました。ほとんどは機長のひざにかかりました。一部がこぼれたのが、ACP(Audio Control Panel=音声制御パネル)です。

ACPは、パイロットが無線通信や機内放送を操作するための機器です。管制塔との交信、乗務員間の連絡、緊急時の通信など、飛行中の「声のやり取り」を一手に担う重要な装置です。

コーヒーがかかった機長側のACPは、すぐに調子が悪くなりました。無線と機内放送がうまく使えなくなり、40分ほどあとには熱を持って故障し、焦げたにおいがしました。

さらに、副操縦士側のACPもボタンが溶け始めるほど熱くなって故障し、煙も見えました。操縦室の2台のACPがどちらも使えなくなり、機長はアイルランドのシャノン空港へのダイバートを決めました。乗員・乗客337人に、けが人はいませんでした。

コックピットの機器は1つ数百万〜数千万円

操縦席に搭載されている機器は、どれも高度な技術が詰まった精密機器です。その価格も一般の感覚をはるかに超えたものがほとんどです。

・通信系機器(ACPなど):数百万円クラス
・ディスプレイ:数千万円クラス

フライトデッキ全体の機器を合計すると、億単位の価格になることも珍しくありません。コーヒー一杯がこぼれた場所によっては、数百万〜数千万円の機器を一瞬で使えなくしてしまうリスクがあります。

コックピット内での飲食ルールと対策

実は航空会社によって、操縦席内での飲食に関するルールが設けられています。液体飲料については、フタ付きの容器を使用することが推奨・義務付けられているケースも多くあります。

この事例でも、コーヒーはフタのないカップで出されていました。報告書によると、運航会社はその後、こぼれにくくする対策をとっています。それでも「こぼす」リスクをゼロにするのは難しく、操縦室内のささいな不注意が、乗客数百人の旅程に影響を与えます。

まとめ

・コックピットでコーヒーをこぼし、ダイバート(目的地以外の空港への着陸)した実例がある
・こぼした先はACP(Audio Control Panel)=無線通信を担う重要機器
・2台のACPが故障して煙も出たため、機長はダイバートを決めた
・操縦席の機器は1個数百万〜数千万円と高額なものがざら
・些細なミスが大きな影響につながるのが航空の世界

操縦席には「ただの飲み物」をこぼす場所がない——そんなシビアな環境で、パイロットたちは日々フライトをこなしています。航空の仕事に興味がある方は、航空整備士の仕事内容もあわせてご覧ください。

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操縦席(フライトデッキ)の構造や仕組みについて詳しく知りたい方は、操縦席の構造(Wikipedia)もご参考ください。

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一等航空整備士
一等航空整備士の資格を持つ、現役の航空整備士です。 日本国内はもちろん、海外でも整備士としての経験を積んできました。 日々、飛行機と向き合う中で感じたことや、現場で学んだリアルな知識を発信しています✈️ 航空ニュースの深掘りや、普段はあまり知られていない整備の裏側、そして空の魅力まで。 飛行機がもっと面白くなる、そんなきっかけを届けられたら嬉しいです。
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