航空コラム

飛行機は雪で欠航する?遅れる理由と欠航が決まるタイミングを現役整備士が解説

飛行機は雪で欠航する?雪の駐機場でデアイシングカーが翼に液をかけ、整備士のサクラ猫が手を温めているイラスト
サクラ

雪の予報が出ると、「乗る予定の飛行機は飛ぶの?」と不安になりますよね。
結論から言うと、飛行機は雪の日でも飛べます。ただし、雪の日は遅れが増え、天気によっては欠航になります。
現役の一等航空整備士の私・サクラが、雪で遅れる理由と欠航になる理由、欠航が決まるタイミングを解説します。雪の日に整備士が機体にかけている2種類の液の話もします。

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結論:飛行機は雪でも飛ぶ。遅れの原因は雪と氷を落とす作業

飛行機は、雪が降っていても飛べます。機体と滑走路の安全が確認できれば、雪の中でも出発します。

  • 遅れる理由:機体についた雪や氷を落とす作業と、滑走路の除雪に時間がかかる
  • 欠航になる理由:雪で前が見えにくい、滑走路が使えないなど、空港の条件で決まる
  • 欠航が決まる時刻:決まった時刻はない。航空会社の「運航の見通し」で確認する

雪の日に飛行機が遅れる理由

雪の日の遅れは、主に機体の雪と氷を落とす「防除雪氷作業」に時間がかかるために起きます。滑走路の除雪も、遅れの原因になります。

機体についた雪と氷を、液で落としてから出発する

翼に雪や氷が残ったままでは、飛行機は離陸できません。出発の前に、専用の車から液をかけて、雪と氷を落とします。

作業は2段階です。先に雪と氷を落とす「デアイシング」をして、そのあとにもう一度凍るのを防ぐ「アンチアイシング」をします。この作業は、整備士も担当しますし、整備以外の部署も担当します。

液の効き目には時間の限りがある

凍るのを防ぐ液の効き目は、ずっとは続きません。国土交通省の資料にも、この点が書かれています。液をかけてから離陸までに効き目の時間が過ぎると、離陸をやめて駐機場へ引き返すことがあります。

引き返した飛行機は、もう一度作業をやり直します。雪が強い日ほど効き目の時間は短くなり、遅れが重なっていきます。

雪の日に飛行機が出発するまでの流れ。雪が積もる、デアイシング、アンチアイシング、離陸の4段階

滑走路の除雪で、離着陸できる本数が減る

滑走路に積もった雪も、除雪車で取り除きます。国土交通省の資料では、新千歳空港の例が紹介されています。2本の滑走路のうち1本を使いながら、もう1本を閉鎖して除雪します。

除雪中の滑走路は使えません。離着陸できる飛行機の数が減るため、出発や到着の順番待ちが起きます。

雪で飛行機が欠航になる理由

雪の日の欠航は、雪で前が見えにくいときや、滑走路が使えないときに起きます。雪の量だけで決まるわけではありません。

  • 視界が悪い:雪で前が見えにくいと、着陸できないことがある。JALの「運航の見通し」でも、理由として「視界不良」が案内される
  • 滑走路が使えない:除雪のあいだ、その滑走路は閉鎖される
  • 到着地の天気が悪い:出発できても、到着地の雪で着陸できない場合は、引き返すか別の空港に降りる

欠航や大きな遅れは、次の便にも響きます。1機の飛行機は1日に何便も飛ぶため、前の便の遅れを次の便が引き継ぐからです。この仕組みは機材繰りの記事で解説しています。

雪の日の欠航はいつ決まる?

雪の日の欠航は、決まった時刻に決まるものではありません。航空会社は天気の予報をもとに見通しを出し、当日も何度も更新します。

たとえばJALの公式サイトには「運航の見通し」というページがあります。遅れ・欠航・出発空港への引き返し・別の空港への着陸の可能性がある空港を、理由と一緒に案内しています。
当日の朝8時の情報に「次回10時頃に案内予定」と書かれている日もあり、数時間おきに更新されています。

便の状態は、次のように表示されます。

  • 天候調査中:天気の様子を見て、運航するかどうかを調べている
  • 条件付き運航:出発はするが、到着地の天気によっては引き返したり、別の空港に降りたりすることがある
  • 欠航:その便は飛ばないことが決まった

自分の便が欠航するかどうかは、出発前に航空会社の公式サイトで確かめるのがいちばん確実です。(参考:JAL「運航状況のご案内(国内線)」)

雪で欠航・遅延になったらすること

悪天候で欠航や遅延が決まったら、手数料なしで別の便に変えたり、払い戻したりできる場合があります。条件は航空会社ごとに違います。

  • ANA:遅延・欠航が決まってから予約便の出発時刻までに手続きすると、出発日の前後7日以内のANA便へ、手数料なしで1回変更できる(ANA公式)
  • JAL:影響が見込まれる対象空港を発着する便は、手数料なしで変更・払い戻しができる(JAL公式)
  • 旅行会社で買った航空券やツアー:買った旅行会社に問い合わせる

当日中に帰れないとわかったら、早めに空港の近くの宿を探しておくと安心です。楽天トラベルなら、空港の名前で検索すると近くの宿が見つかります。

雪の日は、空港で長く待つこともあります。スマートフォンの充電が切れると、運航状況も確かめられません。モバイルバッテリーは機内持ち込みのルールが変わっているので、新しいルールの記事も出発前に確かめてください。

整備士が雪の日にしていること

雪の日の整備士は、機体に雪と氷が残っていないかを確かめて、安全に送り出すのが仕事です。現場で実際にしていることを紹介します。

2種類の液をかける|透明な液と、色の付いた液

私の現場では、雪と氷を落とすデアイシングの液は無色透明です。もう一度凍るのを防ぐアンチアイシングの液には、緑や黄色などの色が付いています。

色が付いているのは、どこまで液がかかったかが目で見て分かるようにするためです。液の色は、液の種類によって違います。

整備士は、目・耳・鼻・手ざわりなど、五感を使って機体の状態を確かめます。到着した機体から液が垂れていたら、雪の日の液の残りなのか、作動油などの漏れなのかを見分けます。

翼に残った氷が危ない理由|見えにくい「クリアアイス」

翼に氷が付くと、空気の抵抗が増えて、飛行機を浮かせる力(揚力)が減ります。そうなると、決められた滑走路の長さでは離陸できなくなるおそれがあり、とても危険です。

アメリカの連邦航空局(FAA)の資料にも、氷の怖さが書かれています。翼の前の部分と上の面に、紙やすりのようにざらざらした氷や霜が付くとします。それだけで揚力は最大30%減り、抵抗は40%増えるとされています(FAA AC 20-117)。

点検では、翼に透明な氷が付いていないかを見ます。「クリアアイス」と呼ばれる氷は透明で、とても見えにくいからです。

寒すぎる空港では、暖房をつけたまま夜を越すこともある

寒さがとても厳しい空港では、夜のあいだ機内の暖房をつけたままにして、朝を迎えることがあります。

いちばん辛いのは、手のかじかみ

雪の日の作業で辛いのは、手がかじかむことです。ふだんは軍手などを使いますが、軍手が邪魔になるほど狭い場所に手を入れる作業もあります。

そこに雨や雪が重なると、手が冷たすぎて痛くなります。

雪の日は、翼の後ろの窓から作業を見てみて

雪の日に飛行機に乗るなら、翼の後ろの窓側の席から防除雪氷作業を見てみてください。専用の車が翼に液をかけていく様子がよく見えます。

透明な液のあとに緑や黄色の液がかかったら、凍るのを防ぐ仕上げの段階です。

サクラ
サクラ

翼の後ろの窓側から、防除雪氷作業を見るのは楽しいと思います。

翼の少し後ろは、揺れにくい席でもあります。理由は揺れない席の記事で解説しています。

飛行機の雪と欠航についてよくある質問

雪の日でも飛行機は飛びますか

飛びます。機体の雪と氷を落とし、滑走路の安全が確認できれば出発します。ただし、遅れることは増えます。

雪で欠航するかどうかは、いつ分かりますか

決まった時刻はありません。航空会社の公式サイトの「運航の見通し」や運航状況で、出発前に確かめてください。

雪の日に飛行機が遅れるのはなぜですか

機体の雪と氷を落とす作業と、滑走路の除雪に時間がかかるからです。液の効き目の時間が過ぎると、作業をやり直すこともあります。

雪で欠航したら、払い戻しはできますか

悪天候による欠航や遅延では、手数料なしで変更や払い戻しができる場合があります。条件は航空会社ごとに違うので、公式サイトで確かめてください。

まとめ:雪の日の遅れは、安全に飛ぶための時間

  • 飛行機は雪の日でも飛べる。遅れの主な原因は、機体の雪と氷を落とす作業と滑走路の除雪
  • 欠航は、視界の悪さや滑走路が使えないなど、空港の条件で決まる
  • 欠航が決まる時刻は決まっていない。航空会社の「運航の見通し」で確かめる
  • 整備士は2種類の液をかけて、見えにくいクリアアイスまで点検している

雪の日の遅れは、翼をきれいにして安全に飛ぶための時間です。風で欠航する基準は、台風と欠航の記事で解説しています。

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一等航空整備士
一等航空整備士の資格を持つ、現役の航空整備士です。 日本国内はもちろん、海外でも整備士としての経験を積んできました。 日々、飛行機と向き合う中で感じたことや、現場で学んだリアルな知識を発信しています✈️ 航空ニュースの深掘りや、普段はあまり知られていない整備の裏側、そして空の魅力まで。 飛行機がもっと面白くなる、そんなきっかけを届けられたら嬉しいです。
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