機材繰りとは?遅延の理由でいちばん多い原因を現役整備士が解説
飛行機の遅延のお知らせで「機材繰りのため」という言葉を見たことはありませんか。ふだん聞かない言葉なので、何が起きているのか分かりにくいと思います。
私は現役の航空整備士です。この記事では、機材繰りの意味と、機材故障との違いを解説します。整備士から見た「飛行機が遅れる理由」も紹介します。
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空港で遅れの待ち時間ができたら、飛行機の本を読んで過ごすのもひとつの手です。『博士ずかん すごい飛行機』(ニュートンプレス)は、科学雑誌『Newton』の小学生向けシリーズの1冊です。
空港ではたらく車や、機内のトイレのしくみ、整備士の仕事を描いたマンガも載っています。Kindle版もあるので、空港の待ち時間にもすぐ読めます。
機材繰りとは「前の便の遅れが次の便に響くこと」
機材繰り(きざいぐり)とは、前の便が遅れたために、同じ飛行機を使う次の便も遅れることです。現場の整備士も「きざいぐり」と呼んでいます。
「機材」は、航空業界で飛行機の機体を指す言葉です。国土交通省は、機材繰りを「前便が何らかの理由で遅延運航になり引き続く次便が遅延運航となる場合」と定義しています。
1機の飛行機が1日に何便も飛ぶ
旅客機は、同じ機体で1日に何便も続けて飛びます。空港に着いたら、次の便の出発までの短い時間で折り返しの準備をします。

折り返しの準備時間が短いと、前の便の遅れを取り戻せません。そのまま次の便、その次の便へと遅れが続いていきます。
遅延の理由でいちばん多いのは機材繰り
国土交通省は、国内線の遅延の理由を次の4つに分けて公表しています。
- 天候
- 機材故障
- 機材繰り
- その他
2026年1〜3月の資料では、どの航空会社でも遅延の理由の大半を機材繰りが占めていました。同じ期間の遅延率は17.15%です。遅延率とは、出発予定から15分を超えて出発した便の割合です(国土交通省「航空輸送サービスに係る情報公開」)。
遅れた便の多くは、その便の問題ではなく、前の便の遅れを引き継いでいるということです。
機材繰りと機材故障の違い
機材繰りと機材故障は、どちらも飛行機が理由の遅れですが、中身が違います。
- 機材故障:これから乗る飛行機に不具合が見つかって、その便が遅れる
- 機材繰り:前の便が遅れたせいで、次の便が遅れる
国土交通省の定義にあてはめると、きっかけが1便目の不具合でも、2便目以降の遅れは機材繰りに入ります。「機材繰り」の裏側に、前の便のトラブルが隠れていることもあるわけです。
機材繰りで欠航になることもある
機材繰りは、遅れだけでなく欠航の理由にもなります。前の便が欠航したり大きく遅れたりすると、次の便に使う飛行機がその空港に届かないからです。
国土交通省も、欠航の理由としての機材繰りを「前便が何らかの理由で遅延運航・欠航になり引き続く次便が欠航となる場合」と定めています。
振り替えや払い戻しの扱いは、航空会社ごとに決まっています。遅延や欠航にあったときは、利用する航空会社の公式サイトで確認してください。
前の便が遅れる理由はさまざま
前の便が遅れる理由は、1つではありません。
- 天候(台風、雪、強い風など)
- 空港や空の混雑
- 整備(不具合の修理など)
整備士の立場では、前の便の遅れはよくあることなので、特に気にしていません。理由が天候なのか、混雑なのか、整備なのか、毎回さまざまだからです。
台風のときに何メートルの風で欠航になるのかは、台風と欠航の記事で解説しています。
飛行機は車よりずっと不具合が多い
意外に思われるかもしれませんが、飛行機は不具合がとても多い乗り物です。不具合が出る場面も、次のようにさまざまです。
- お客様の搭乗が終わったあと
- 出発の直前
- エンジンをかけたあと
- 離陸したあと
理由は、飛行機が過酷な環境を飛んでいるからです。上空の気温は、マイナス50℃前後まで下がります。機内に空気を送り込んで気圧を保つため、機体は飛ぶたびに内側から押し広げられます。着陸すると元に戻り、次の便でまた押し広げられます。

車はめったに壊れませんが、飛行機はめちゃくちゃ不具合が多いんです。それだけ過酷な環境を飛んでいるので、どうしても不具合は出てしまいます。
不具合が見つかったら整備士は何をする?
出発前の点検で不具合が見つかったら、整備士はまず、その場で直せるかを確かめます。すぐに直せないときは、別の飛行機に替えることがあります。
別の飛行機に替えるときは、代わりの機体の出発準備を急いで進めます。機体を替えると、搭乗ゲートが変わることもあります。
条件つきで、そのまま出発できる不具合もある
不具合が見つかっても、すべてがその場で直す対象になるわけではありません。航空会社は「運用許容基準(MEL)」という決まりを持っています。
運用許容基準には、一部の装備品が動かない状態でも、決められた条件を守れば飛んでよいものが定められています。国の承認を受けた基準です。そうした不具合は、条件を守って出発し、あとで決められた期限までに直します。
逆に、運用許容基準で認められていない不具合は、直すまで飛べません。直すのに時間がかかれば、その便が遅れたり、別の飛行機に替えたりすることになります。
まとめ
- 機材繰り(きざいぐり)は、前の便の遅れを引き継いで次の便が遅れること
- 国土交通省のデータでは、遅延の理由でいちばん多い
- これから乗る飛行機の不具合で遅れるのは「機材故障」
- 前の便が遅れる理由は、天候・混雑・整備などさまざま
- 飛行機は過酷な環境を飛ぶので、不具合は車よりずっと多い
- 不具合の中には、決められた条件を守ればそのまま出発できるものもある
機体の入れ替えで搭乗ゲートが変わる理由は、空港の搭乗ゲートはなぜ変わる?機材変更の理由を現役整備士が解説にまとめています。

