飛行機に雷が当たったらどうなる?機体の材質で修理が激変する話を現役整備士が解説
フライト中、窓の外で稲光 「この飛行機に雷が落ちたらどうなるの!?」と不安になったことはありませんか?
結論から言うと、飛行機に雷が当たっても、乗客は安全に守られています。ただし整備士の視点で見ると、雷のあとには「機体の材質によってまったく違う世界」が待っているんです。この記事では、現役一等航空整備士の私が、雷が当たった機体に何が起きるのか、そして修理の裏側までお話しします。
結論:飛行機に雷が当たっても墜落しません
まず安心してほしいのはここ。飛行機は雷が当たることを前提に設計されています。電気は機体の外側の表面を流れて空中へ抜けていくため、中にいる乗客や重要な装備に直接影響が及ばない構造になっているのです。
実際、被雷(雷が当たること)は珍しい出来事ではありません。整備の現場でも、雷が当たった機体の点検・修理は定期的に発生する、いわば「おなじみの仕事」のひとつです。

雷が当たると「入り口」と「出口」ができる
ここからが整備士の世界。雷が機体に当たると、電気が入った場所と抜けた場所——つまり「入り口」と「出口」が、はっきり分かるくらいに焦げたり溶けたりします。
例えば機首付近から入って、翼の端や尾部から抜ける。被雷後の点検では、この入り口と出口を探しながら、機体全体をくまなくチェックしていきます。雷の通り道を読み解くのは、ちょっとした推理のようでもあります。
アルミの機体なら、修理は意外とシンプル
ほとんどの飛行機の機体はアルミニウム合金でできています。アルミは電気をよく通す(導電性が高い)ので、雷の電気は機体表面をスムーズに流れて抜けてくれます。
それでも被雷のダメージは残ります。よくあるのはリベット(機体のパネルをとめている鋲)が溶けるパターン。ただ、これは溶けたリベットを交換すればいいだけなので、修理としては比較的シンプルです。「入り口と出口を見つけて、傷んだ部分を交換する」——アルミ機体の被雷修理は、整備士にとって手順の見えやすい仕事です。
B787(カーボン機体)は話がまったく違う
ところが、ボーイング787のような新世代の機体は事情が変わります。787の機体は、アルミではなくカーボン繊維の複合材(CFRP)でできています。軽くて強く、燃費に貢献する素晴らしい素材なのですが——電気をあまり通しません(導電性が低い)。
さらにCFRPは、カーボン繊維のシートを何層も重ねた積層構造。雷のエネルギーが加わると、この層と層の間が剥がれる「剥離(はくり)」が起きることがあります。表面の焦げなら見れば分かりますが、剥離は内部のダメージ。そして積層構造の修理は、リベット交換のようにはいかず、非常に大変なのです。
同じ「雷が当たった」でも、機体の材質によって修理の難易度が激変する——これは、新しい素材の飛行機が増えていく時代の、整備現場のリアルな課題でもあります。
乗客のみなさんへ:雷が光っても大丈夫
ここまで修理の大変さを語ってきましたが、大事なことなのでもう一度。飛行機に雷が当たっても、乗客の安全は守られています。被雷した機体は、整備士がしっかり点検し、必要な修理を終えてから次のフライトに向かいます。
フライト中に雷が光ってドキッとしたら、「この機体は雷を想定して造られていて、地上では整備士が待ち構えている」と思い出してください。それが、空の安全の仕組みです。
よくある質問
Q. そもそも雷に当たらないように飛べないの?
A. パイロットは気象レーダーを見ながら雷雲をできるだけ避けて飛びます。それでも空の天気は変わりやすく、完全にゼロにはできません。だからこそ「当たっても大丈夫な設計」と「地上での点検・修理」の二段構えになっているのです。
Q. 乗っているときに被雷したら分かる?
A. 「ドン」という音や閃光に気づくこともあれば、まったく気づかないこともあります。気づかないくらい、機体が電気をうまく受け流してくれているということですね。
Q. 車も雷に強いって聞くけど、同じ原理?
A. はい、似ています。金属のボディの表面を電気が流れて、中の人には届きにくい——という考え方は共通です。飛行機はそれを空の上でやってのけている、というわけです。
まとめ:雷対応も「材質を読む」時代へ
飛行機に雷が当たると、入り口と出口ができる。アルミ機体ならリベット交換で比較的シンプルに直せるが、787のようなカーボン機体は剥離が起きて修理が非常に大変——。同じ雷でも、機体の素材によって整備の世界はこんなに違います。
飛行機の進化とともに、整備士に求められる知識も進化し続けています。そんな「学び続ける仕事」の面白さも、このブログで伝えていけたら嬉しいです。

整備士の仕事の全体像は航空整備士の仕事内容とは?4種類を現役が徹底解説をどうぞ。
航空の安全の取り組みは国土交通省 航空局の公式サイトもご参照ください。
