飛行機の酸素マスクはなぜ落ちてくる?仕組みと付け方を現役整備士が解説
飛行機の安全のビデオで、天井から酸素マスクが落ちてくる場面を見たことがあると思います。本当に落ちてきたら、何が起きているのか不安になるはずです。
私は現役の航空整備士です。この記事では、飛行機の酸素マスクが落ちてくる理由と、正しい付け方を解説します。整備士が酸素マスクにしている作業も紹介します。
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子どもと飛行機に乗る前に、飛行機のしくみを一緒に知っておくのもひとつの手です。『博士ずかん すごい飛行機』(ニュートンプレス)は、科学雑誌『Newton』の小学生向けシリーズの1冊です。目次には「機内の空気は2~3分で入れかわる」という項目もあり、機内の空気のしくみも載っています。
酸素マスクが落ちてくるのは「機内の空気が薄くなったとき」
飛行機の酸素マスクは、機内の空気が薄くなったときに天井から落ちてきます。
旅客機は、高度1万m前後の空気の薄いところを飛んでいます。機内には空気を送り込んで気圧を保っているので、ふだんはマスクがなくても普通に呼吸できます。
ふだんの機内の気圧は、高いところでも標高約2,400m(8,000フィート)と同じくらいに保つよう設計されています(FAA 14 CFR 25.841)。
ところが、急減圧で機内の気圧が急に下がったり、機内の高度が高くなったりすると、酸素マスクが落ちてきます。機内の高度とは、機内の気圧が地上のどのくらいの高さと同じかを表したものです。
マスクが出るしくみには、自動と手動の2つがあります。アメリカの設計基準では、機内の高度が約4,500m(15,000フィート)を超える前に自動で出る決まりです。自動で出なかったときのために、乗務員が手で出す手段も必要です(FAA 14 CFR 25.1447)。
マスクは座席の数より多い
同じ基準では、マスクを座席の数より少なくとも10%多く用意することになっています。客室の天井には、座席の数より多めのマスクが収まっています。
酸素が足りないと、判断が遅くなる
酸素が足りなくなると、頭の働きが鈍くなり、判断が遅くなります。酸素欠乏症は、とても怖いものです。
FAA(アメリカ連邦航空局)の資料では、高度約10,700m(35,000フィート)で酸素がないときの時間が示されています。旅客機が飛ぶ高さです。正しく行動できるのは30秒〜1分、急減圧のあとは15〜30秒まで短くなります(FAA AC 61-107B)。
旅客機は機種によって、最高で約43,100フィート(約13,100m)まで上がります。同じ資料では、43,000フィートで正しく行動できる時間は9〜12秒です。

機内の気圧がふだんどう保たれているかは、飛行機の窓が割れたときの記事で解説しています。
マスクが出たら、まず自分、次に子ども
客席全部の酸素マスクが出たら、すぐに顔に付けてください。
子どもがいる場合も、先に自分のマスクを付けます。自分のマスクを付けたあとで、子どもに付けてあげましょう。
先に子どもに付けようとして手間取ると、その間に大人の判断が遅くなってしまいます。大人が動けなくなれば、子どもを助けられません。
付け方の細かい手順は、機種や航空会社によって違います。客室乗務員の案内と、座席ポケットにある安全のしおりに従ってください。

酸素欠乏症は本当に怖いです。マスクが落ちてきたら、迷わずすぐに顔に付けてください。
酸素は化学反応とボトルから出る
酸素マスクに送られる酸素のつくり方は、機種によって違います。
- 化学反応で酸素をつくる装置から出すタイプ
- 酸素を詰めたボトルから出すタイプ
どちらのタイプでも、乗客がすることは同じです。マスクが出たら、すぐに顔に付けます。
整備士は酸素マスクに何をしている?
整備士が酸素マスクにしている作業は、主に次の3つです。
- 使用期限が来たら交換する
- マスクがきちんと出るかをテストする
- 着陸の衝撃で落ちたマスクを元に戻す
テストでは工具をつけて、マスクを完全には落とさずに、パネルが開くところまでを確かめます。
着陸の衝撃で、まれに数か所のマスクが落ちることもあります。そのときは、整備士が天井に収納し直します。
10年に1度の「全部落ちた」日
ごくまれに、スイッチの誤操作で客室の酸素マスクが全部落ちることがあります。私の感覚では、10年に1度くらいです。
こうなると大変です。機種にもよりますが、何十席分ものマスクを収納し直さなければなりません。
収納は慎重に進めます。扱い方を間違えると安全ピンが外れて、酸素が流れてしまう可能性があるからです。
まとめ
- 飛行機の酸素マスクは、急減圧などで機内の空気が薄くなったときに落ちてくる
- マスクが出るしくみには自動と手動があり、マスクは座席の数より多い
- 巡航高度では、急減圧のあと正しく行動できる時間は15〜30秒しかない
- マスクが出たら、まず自分、次に子どもに付ける
- 整備士は、期限での交換やテスト、落ちたマスクの収納をしている
機内の気圧が下がるとどうなるかは、飛行機の窓が割れたらどうなる?乗客が吸われかけた事故の原因を現役整備士が解説で詳しく紹介しています。

